深海。
光がほとんど届かず何百気圧という水圧がかかる
過酷な暗黒世界。
そんな暗黒世界という舞台で光をたくみにあやつる生物が
数多くいる。
よく知られているのがチョウチンアンコウだろう。
チョウチンアンコウ 学名(Himantolophus groenlandicus )
チョウチンアンコウといえば、頭の上に伸びる
釣り竿のようなもので発光器を吊るしている。
まさにそれは光のルアーで、その発光器をちょちょいと動かすことに
よって獲物たちを誘引する捕食道具なのだ。
しかし
光って誘き寄せるだけではない!
なんと釣り竿の先端から発光液を噴出するのだ!
そのまばゆい光は獲物たちの目をくらますことが
できるのだという!
しかし
暗黒世界である深海においての発光器を身を守る技として
つかう深海魚もいる。
テンガンムネエソ 学名(Argyropelecus hemigymnus )
水深1000mの深海に生息する深海魚
これくらい深い海でも海面からわずかに青い光が届いている。
テンガンムネエソの目は海面を見るために上向きについており
海面の光をバックに映る獲物の陰影を常に探っているというわけだ。
逆にテンガンムネエソも同じ要領で下から天敵に狙われている
可能性は十分にある。上向きの目は無防備ではないか!
いやいや
実はテンガンムネエソを下から見てもその陰影が見えなくなっている!
これはどういうことなのか!
テンガンムネエソには腹部に発光器を備えており、
これを光らせることによって
海面からくるわずかな青い光に同調、
カモフラージュしているのだ!
この技を「カウンターシェーディング」とよばれ、
自分の体の影を掻き消し敵の目をくらますという光技なのだ!
さて
実はこのカウンターシェーディングを見破ってしまうという
とんでもない深海生物がいる!
クラゲイカ 学名(Histioteuthis dofleini)
左右の目が向きも大きさもずいぶん異なったイカのなかま。
背中側と上向きについた左目は右目の2倍の大きさはあるわけだが、
この左目は黄色い水晶体でできている。
黄色い水晶体は青い光を吸収する特性を持つらしい。
このことによって
クラゲイカは海面から届く青い光は見えないということになる。
すると
自ら光ることによって海面からの青い光に同調し、カモフラージュしていた
深海生物の発光器だけが丸見えとなってしまい
カウンターシェーディングという光技は無効になってしまうのである。
というわけで今回の記事とは
まったく関係のないご案内なのですが
5月30日に刊行した
「ミョ~な絶滅生物大百科」ですが、
電子書籍版が発売されました。
http://www.bookgate.info/books/6180
それではどうぞよろしくお願いします。