ニホンウナギ 学名(Anguilla japonica )
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今年はウナギ養殖に使われる稚魚(シラスウナギ)の記録的な不漁で
ウナギの価格の高騰が著しいようだ。
シラスウナギの漁獲量は1960年代には年間150トンもあったが、
2000年代に入ると年間15トンと10分の1に激減している。
比較的豊漁だった2009年は25トンあったシラスウナギの漁獲量も
10年、11年には9.2~9.5トンと10トンを割り込んだしまったようだ。
そういった状況下で日本の食文化を代表するウナギの安定供給は長年の悲願でもあるが、
2010年にはウナギを卵の段階での完全養殖に成功しているものの、
市場への安定供給にはまだまだ道のりは長いそうだ。
さて、ウナギは淡水魚であるが、産卵する繁殖地は日本本土にはなく、
意外にもグアムやサイパン沖のはるか遠い海の底。
私たちが食べるほぼすべてのウナギはその遥か遠い海の出身なのである!
■ウナギの生涯■
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最近の調査でニホンウナギのレプトケファルス幼生(葉型幼生)と呼ばれる
生後間もない稚魚が捕獲され、ニホンウナギの生息地がほぼ確定されている。
場所はグアム島西側沖にあるスルガ海山の西へ100km地点であるそうだ。
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産まれたばかりのウナギの稚魚は、
そこから透明で葉型の小さな体で身を任せるように北赤道海流に乗り、
そして黒潮に乗り換えて、日本近海へやってくる。
ここでシラスウナギに成長したニホンウナギが
捕えられ、養殖されて私たちに食べられるわけだ。
そして天然のウナギは淡水魚として、川や湖で小動物を捕食し、
5年から十数年をかけて成熟。
その後、誰からも教わることなく、
海へ下り、日本から南へ2500kmも離れた繁殖の地、
スルガ海山へ向かうのだ!
ウナギの産卵時期は6月~7月の新月の日で一斉に産卵するらしい。
これはマリアナ諸島沖でのニホンウナギの天然卵の採取によって明らかにされている。
それでは
なぜ、ニホンウナギはこのような一生を送るのか・・・。
■ウナギ類の進化系統■
東京大学海洋研究所と千葉県立中央博物館の研究チームは
ウナギ目などの計56種についてDNA分析した結果、
ウナギ類の系統図が描かれた。
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ニホンウナギは
浅い海にすむウナギの姿に似たアナゴやハモ、ウツボ
よりも
深海にすむシギウナギ
やフクロウナギ
といった
深海魚に近い関係にあることがわかった。
つまり、ウナギの祖先はもともと深海に生息しており、
エサ資源の乏しい深海よりも、川や湖といった淡水域の方がエサが豊富なため、
エサと成長の場を求めて深海から川へ遡上するように
なったのではないかといわれている。
さて、淡水域に成長し、遥か遠い海の特定された場所産卵する
ニホンウナギ。
このような生態をもつウナギは遥か遠い地のヨーロッパにもいるという。
■ウナギの分布史■
ヨーロッパウナギがその1種だが、その姿はニホンウナギとほぼ同様。
ヨーロッパ全域の河川に生息するが、
これもまた産卵場は長らく不明であった。
古代ギリシャの哲学者アリストテレスは「ウナギは泥の中から自然発生する」と記している。
それからようやく1920年代になって、バミューダ諸島周辺で産まれたばかりの仔魚を採取し、
大西洋の真ん中、サルガッソ海が、産卵場所であることを突き止めた。
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ちなみにこのサルガッソ海は
メキシコ湾流、北大西洋海流、カナリア海流、大西洋赤道海流に囲まれた海域。
この4つの海流が時計回りに流れており、たいへん大きな渦につくっているため
大量の浮遊性の海藻がサルガッソ海に流れ着き、海面はたいへん粘ついた海域なのだ。
また風の弱い場所もあり、粘ついた海面と相まって帆船が身動きをとれず、
船上で餓死をする船乗りも相次ぎ、その船はこの海域で幽霊船として彷徨いつづける
というたいへん危険な海域で、たいそう恐れられていたらしい。
それはさておき、
太平洋のニホンウナギ、大西洋のヨーロッパウナギ
その姿も生態も似ているが、生息域がなぜ、これほどまでに離れているのか・・・。
ニホンウナギとヨーロッパウナギが離ればなれになったのは
およそ1億年前の大陸配置によるものだと考えられている。
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およそ1億年前はユーラシア大陸(アジア、ヨーロッパ)とアフリカ大陸が離れており、
その間にテチス海という海域が存在していた。
その海には赤道上をぐるりと地球一周するほどの「古環赤道海流」という
大きな海流が流れていたのだ。
ウナギの祖先の一部がこの海流に乗って、
大西洋に入り、それが今のヨーロッパウナギではないかといわれている。